『「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化・検討会の中間とりまとめ』を読んで
昨年の9月、厚生労働省に設けられた『「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会』が、『中間とりまとめ』を発表しました。
「医師不足」・「医療崩壊」が、社会的な問題になる中で、舛添厚生労働大臣が「日本の医師は総体として不足している」と、それまでの「医師数抑制」から「医師数の増加」へと、「医師数抑制」をした閣議決定からの事実上の切り替えを表明しました。『安心と希望の医療確保ビジョン』が公表され、その具体化に向けての検討会がもたれ、その『中間とりまとめ』です。
救急病院での相次ぐたらい回しなど、「医師不足」は深刻な事態です。医師を増やすことは緊急の課題です。
わたしが、まず気になったことは、「疲弊している」という勤務医の現状をどのように見るのか、そしてどういう状態にまで増やすのか、と言うことです。
OECDとの比較で、医療費が「21位と低い水準にある」、人口10万対の医師数が「26位と低い」と指摘しています。しかし、「疲弊する」のは労働条件が悪いからだと思います。
たとえば、労働時間は、労働基準法では「週40時間、1日8時間」と定められています。舛添厚労相も述べていますが「日本の医師は週に70時間も働いている」のです。ところが、日本の病院勤務医の労働時間を調査したデータはないのです。ここが、問題です。
また、病院勤務医には「当直」がつきものですが、この実態も明らかにする必要があります。病院によって状況が異なるのは当然ですが、それぞれの病院で現在「当直」として扱われているものが、労働基準法に照らして「当直」なのか「夜勤」なのか、明確にする必要があるのではないでしょうか。勤務医のアンケートのいくかを拝見しましたが、このあたりの混同が多数あるようです。
「当直」に当たるか、「夜勤」に当たるか。厚生労働省の「第4回・医師の需給に関する検討会」資料「医師の宿日直勤務と労働基準法」が参考になります。(2005年4月・厚労省労働基準局監督課) アドレス:http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/04/s0425-6a.html
「夜勤」は労働時間としてカウントされますが「宿直(当直)」は労働時間としてカウントされませんので、これによっても勤務医の労働時間のデータは変わりますから「医師不足」の数を求める数値に影響します。この実態の把握は厚生労働省の緊急の宿題でしょう。
もう一つ、「オンコール」という拘束時間の問題があります。自宅にいても「緊急の呼び出しに応じなければならない」では、勤務から解放されたとはいえません。
「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化検討会では、「長谷川データ」への批判が出されています。わたしも、昨年、「医師需給検討会『報告書』への疑問」で、「週の労働時間を48時間として……」と述べていることに疑問を呈しました。また、「診療、教育、他のスタッフ等への教育、必要な会議などへの参加、自己研修や研究も含めた病院に滞在する時間をトータルした時間の63・3時間」とした上で、「診療を行っている時間のみを勤務時間」として「週40時間」とするなど、勤務医の業務の内容を実態とかけ離れたものに描こうとするような疑問に満ちたものでした。
厚生労働省には、長谷川データのような時代遅れのものにとらわれず、最新の正確なデータを出されるよう期待します。
今回の「『安心と希望の医療確保ビジョン』具体化検討会」では、医師のスキルアップなどが論議されています。臨床医の知識と技術の向上は、患者としても望むところです。病院も、使用者として技能の向上は必要ではないでしょうか。そのための時間は、当然必要ですよね。
また、わたしのブログへのアクセスに「QC活動」というのが時々あります。トヨタで過労死した内野健一さんの労災認定裁判で、名古屋地裁が2007年11月、「QC活動についても労働時間」と判決が出されています。もし、病院でもQC活動が行われているとしたら、労働時間の可能性が大です。指揮命令との関係など、業務との関連を調べる必要があります。
週に70時間も、実態はもっと多いと思いますが、働いている勤務医の労働時間を法の定める基準=週40時間・一日8時間になるようにする――これが、「安心と希望」の第一歩ではないでしょうか。ちなみに、ヨーロッパの医師は35時間から40時間ほどの労働時間だそうです(海野伸也さんはじめ13名による「『安心と希望の医療確保ビジョン』具体化に関する検討会への提言」・2008年8月)。
ヨーロッパの労働者は、労働時間の短縮のたたかいにねばり強く取り組んできました。日本の勤務医も、「週40時間労働」を掲げて16万人が団結することが必要だと、わたしは思います。
「『安心と希望の医療確保ビジョン』具体化検討会」については、引きつづき述べていきたいと考えています。
医療の再生へ、今年がよい年でありますように
ゆうたろう


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